第5章 今夜から
次の瞬間コツンと額に何ががぶつかり、ゆっくりと目を開ける。さらりと何かが私の頬をくすぐり瞳を開けた先にはドアップな悟の顔がある。つまりは、私と悟の額同士がくっついているということだ。
突然のことに…というかさっきまで起きていた流れとはあまりに違するぎるその展開に、私は少なからず驚き目を大きくすると目の前の形の良い唇がゆっくりと開いていく。
「映画の時からずっと緊張してたでしょ。まぁ僕としては嬉しい限りなんだけど、そこまでずっとガチガチに緊張しちゃうとヒナも疲れるでしょ」
瞳は優し気に細められ、さっきまでの表情とは違いいつもの悟の表情にほっと安心感を覚える。
「僕達が一緒に過ごせるのはベットの上だけって言ったのは、本当は毎日一緒にご飯食べたりテレビ見てゆっくりしたいけど、きっと僕が帰宅する頃にはヒナ寝てるだろうから。だからせめて毎日一緒に眠りたいなと思ったんだよね」
「そっか…」
「大丈夫だよ、ヒナが嫌がることはしないから。絶対にね」
その表情は柔らかく私を安心させてくれる優しくて何度も見てきた悟の顔だ。
その悟の言葉に自分が勘違いをしていたのだと気が付き一気に顔が赤く染まっていく。うわ、何それ、私恥ずかしすぎる。恥ずかしすぎるじゃん!!それを私は…「その先」と勝手に勘違いして…
「穴があったら入りたい…」
そう小さく呟けば、悟は「ぶっ」と吐き出すようにして笑う。つまるところ悟は手を出すつもりは無かったのに私が勘違いをしているのを良いことに「その先」に赤面する私をからかっていたという事だ。
悟のことだ、何をされても正直驚かないという反面…まんまとそんな彼のおふざけに緊張していた自分が情け無くて恥ずかしい。