第26章 ナメすぎでしょ
もくもくと立ち込める砂埃。その影から飛び降りてきた人物へと五条は目を向けニッコリと笑みを作った。
「ははっ、本当僕の奥さんってカッコ良くて可愛いなぁ。惚れ直しちゃった」
五条の見据える先には男を片手で軽々と持ち上げ、これでもかというほど冷めた瞳で男を見上げている自身の妻の姿。
普通の夫ならばこんな妻の姿を見たらドン引きするのは間違いないのだが、五条はこんな姿の彼女ですら心底愛おしいとそう思った。
強くて可愛くて己をしっかりと持っていて、最高だとすら思っているのだ。
「悟に手を出したら、タダじゃおかない」
普段からは想像も出来ないほど低く冷たい彼女の言葉を、掴まれていた男が聞いていたのかは分からない。何故なら男はすでに抵抗すらも出来ないほどボロボロになっていたからだ。
彼女は呪具を持ってきていないはずだし、となると体術のみであそこまでやったのか。さすがだ。まぁ彼女があそこまで怒っているのは珍しいから何かあったのだろう。
言葉からして僕絡みのようだ。やはり惚れ直さない方が無理という話だろう。僕の奥さん最高すぎるでしょ。
最強の僕を守ってくれるなんてさ、本当君くらいだよ。
大丈夫だろうとは思っていたが、五条は彼女の傷ひとつない姿を見てホッとため息を吐き出した。