第5章 今夜から
碧く綺麗な瞳が私を見つめる。
まるで澄んだ空を閉じ込めたみたいなその碧に、思わず吸い込まれそうになる。
「早くおいでよ」
「…一緒に寝るの?」
「もちろん。今日は僕早く仕事終わったけどいつもは日付けが変わらないと帰って来れないからね。きっとヒナと過ごせるのはこのベッドの上だけ」
その言葉に私は大きく目を見開き、次の瞬間には顔を真っ赤に染めた。きっとトマトなんかよりもずっとずっと赤かったに違いない。
私と一緒に過ごせるのはこのベッドの上だけ?え?それって…え?まさか……えっ!?
悟が忙しくて日付が変わらないと帰ってこれないのは分かった。だから私と同棲したとしてもなかなか時間が取れないことも分かった。だけど…えぇ…!?
恋人扱いするって言ってたのは確かだ。そしてさっきだって恋人のような雰囲気になっていた。後ろから抱きしめられて映画を観るなんて幼なじみの時だったら絶対にないことだし。
手を繋ぐのも…キスをするのも…練習していこうねと優しく言っていた悟…その先も…って言っていたことも覚えている。でもだからってその時言っていた「その先も」がまさかこんな早く来るとは思っていなかった。というか思うわけがない。
え?普通の恋人達はこんなにも展開早いの?恋人がいたことのない私には全くもってそこら辺の流れが分からない。常識も分からない。
ただ分かるのは、私は今から悟の座るこのベッドへ行くということ。