第26章 ナメすぎでしょ
「貴方は、悟に憧れているんでしょう?」
だけど五条悟は最強である前に、ただの一人の人間なのだ。目の前に見えている彼のソレが全てではない。
だからこの男は何も分かっていないんだ。
何故彼が最強になったのかも。
何故最強と言われるようになったのかも。
そして五条悟という彼の事も。
「…憧れ…?僕が?そんなわけないだろッ!!」
「私には、羨んで憧れているようにしか聞こえませんでしたけど」
男は体をふるふると震わせ、怒りからか額にはふっくりと膨れ上がった血管が張り詰めている。
「ふざけんな!!僕が何故あんな奴を羨み憧れるんだ!!あんなッあんなイカれた怪物なんかに!!」
……イカれた…怪物…?
その瞬間、私の中の何かがプツリと切れたような気がした。それはとても呆気なく。そしていとも簡単に、だ。
大丈夫、理性は飛ばない。それどころかいつもよりも酷く冷静だ。
苛立ちも、嫌悪感も、私の腹の中に膨れ上がっていたソレはとても冷静に私を静かな海底へと連れて行くかのようにして冷やした。
それは紛れもなく心の底から湧き起こる静かな『怒り』
あぁ、やっぱり私はこの男が心底嫌いだ。