第26章 ナメすぎでしょ
この男は悟が全てを持って生まれたと言った。強さも、地位も、何もかも全てを。
だけどそれは違う。確かに悟は五条家として生まれ無下限と六眼を持って生まれた。だけど彼が強くなったのも、最強だと言われるようになったのも…生まれ持ったモノなどではないからだ。
彼が努力し、そして手に入れたモノだった。
小さい時から特別な存在として扱われていたが、それゆえ彼を普通の五条悟として扱う人は少なかったし、彼は特別な存在でなければならなかった。
強く、そして価値のある存在でいなくてはならなかった。
油断も甘えも弱さえも見せる事は許されなかったし、そして悟がそれを他者へと見せる事も決して無かった。
彼が五条悟であるが故に、多くの物を失ってきたし、そして多くの事を経験してきたはずだ。
自分が死にかけた事だってあった。自分の大切な人間が亡くなった事だってあった。目の前に突きつけられた薄汚い現実に呆れ、絶望し、そして眼を瞑りたくなるような事すら多くあっただろう。
それでも彼は五条悟であり続けた。
この28年間ずっとそうだ。
彼はずっと絶対的存在の五条悟であり続けたのだ。