第26章 ナメすぎでしょ
辺り一面には薄暗い空間が広がる。キョロキョロと周りを見渡すが、ある物といえば壊れかけのライトがチカチカと音を出しながら薄らと光っているくらいだ。
…ここは、地下室だろうか。
後ろで拘束された両手をそっと動かせば、ジャラリと鎖の音が聞こえてくる。なんらかの呪具だろう。攻撃をすればこちらの呪力を吸収してしまうとかそういった類の物か。
「…はぁ」と私は小さく溜息を吐き出すと、先ほど起きた自分の失態に泣きたくなった。
何故私がこんな場所にいるのかと言うと…
悟がしばらく仕事の電話に対応している間、暇を持て余した私はコテージの近くの砂浜を歩いていたのだが…それがいけなかった。
ボーっとしながらぷらぷらと歩いていた私は、突然起きた耳鳴りに眉を歪ませた瞬間、一瞬の幻術のような空間へと引き摺り込まれ…気が付いた時にはこの部屋にいたというわけだ。
多分耳鳴りは、私の意識を少しでも乱すためだろう。そして突然訪れた幻術が作り出す空間に入る瞬間…おそらく眠らされたのだ。
あぁ、最悪だ。こんな失態最悪すぎる…普段なら絶対にこんな事ないのに。浮かれてた、浮かれ過ぎてた。
そして何よりもヤバイのは、この見るからに怪しい場所に捕まってしまった事への恐怖心や焦りなどではない。そんなものじゃない…
悟が多分怒っている。いや絶対に怒ってる。なんなら地球を破壊するんじゃないかってくらいの勢いで怒ってる可能性がある。