第25章 初めての夜
早足で歩き続けていれば、今度は腕を引いていたはずの私の方が強く引かれ足がもつれる。
「わぁっ、ちょっと悟!?」
突然何事かと思い背後へと振り返れば、悟はそのまま私を裏路地へと引きずり込み壁へと強く押し当てた。
真上からは悟の冷ややかな視線が私を見下ろす。
左手はズボンのポケットへと入れているものの、右手は私の身体を逃すまいと拘束するように壁へと置かれていて、そして何よりも…彼の長い右足が私の股下へとグッと入り込んだ。
壁ドンプラス足ドンというやつだろうか…いや、膝ドン?もうよくわからないけど、とにかくヤバイ。とんでもないくらい怒っている。
「さと、る…怒ってるよね…?」
そんな私の言葉に、悟は冷ややかな視線を向けたまま小さく口角を上げるといつもよりもさらに低い声を出した。
「ヒナがそう思うなら、そうなのかもしれないねぇ」
その声は、低く静かで冷たくて…彼の怒りを感じるには十分だった。