第25章 初めての夜
あ、そっか。私あんなところに一人でいたから一人旅だと思われたのかもしれない。
「すみません、今電話をしてる連れを待ってる所だったんです」
「あ、じゃあそのお友達も一緒に!」
「友達じゃなくて…」とそう言いかけたところで、背中に感じる冷たい呪力に一瞬にして背筋が凍った。
あぁ、これはヤバイ。振り向かなくても分かる。これは怒っている…いや、物凄く怒っている。
多分呪力だって、わざと分かるように垂れ流しているのだ。非術師とてここまでの冷ややかな呪力を浴びれば、少なからず不穏な雰囲気は察するだろうから…
グイッと背後から身体を引かれ、その瞬間に腰に絡みつく腕に力がこもった。
「ヒナちゃん、こんな所で何してるのかなぁ?僕すっごく探したんだよ?」
…凄く探したというのは多分嘘だろう。だって呪力感知が得意な悟が、私の居場所を分からないはずがない。いつだって私の居場所を一発で当てられるような人だ。
「…悟」
悟は私を背後から抱え込むようにして抱きしめると、目の前に立つ男性二人を見下ろしその碧く綺麗な瞳をニッコリと細めゆるりと口角を上げた。
それはもう…不自然なほどに…
「僕の奥さんに、何か用かな?」