第25章 初めての夜
いつもブーブー文句を言いながらも、きちんと仕事をこなす彼を凄いと思う。まぁ時々伊地知君に物凄い迷惑をかけたりしているが、それでも何だかんだ仕事に真面目でちゃんとこなしているのだ。
誰よりも労働時間が多い中、教師までしているそんな彼の我儘を少しでも聞いてあげたいと思う。
私が入ったお店は雑貨屋で、10分ほど見ていたが悟が戻って来る気配はまだない。何か面倒な事が起きたんだろうか。
とりあえずお店から出てスマホを一応確認してみるが、特に連絡はないしどうしようかと考えてきると、近くに立っていた人達の声が聞こえてきた。
その声は日本語で「探してる店なくね?」と若い男性の二人組が辺りを見渡しながらスマホと睨めっこしている。
幸いにも男性達の探しているという店の名前には聞き覚えがあって、先ほど悟と一緒に行った店だ。うーんどうしよう…と悩んだ末、私は自分の立っていた場所から離れ歩き出す。
「そのお店なら場所知ってますよ」
多分、悟はまだ帰って来ない。道案内くらいなら大丈夫だろう。きっと彼が来るよりも前に戻ってこれるはず。