第25章 初めての夜
悟でなければならない事や、彼が確認しないといけない事がたくさんあるらしい。現場に出ていなくてもこれほど電話が鳴り止まないなど、本当彼の忙しさには頭が下がるばかりだ。
「あー、無視したい」
「気持ちは分かるけどちゃんと出ないと。夜蛾学長なら尚更帰った時怒られそうだしね」
「いつも死ぬほど働いてるんだから、新婚旅行の時くらい電話出なくたってバチあたらないよ〜」
泣き真似をしながら私にすりよる悟の頭をポンポンと撫でる。本当、その通りなんだけどね。
新婚旅行に来て3回目の電話が鳴った時、悟がイラつきのあまりスマホをチリにしようとするのを必死に止めた。「うんうん、本当いつも頑張ってるのにこんな時まで辛いよね」と頭を撫でれば、悟は眉を垂れ下げ捨て犬のような顔で私の胸に顔を埋めていた。
悟はいつも誰よりも頑張ってて凄いよ。本当に。本当に尊敬する。
「もうスマホ壊しちゃおうかな」なんて言いながらも結局はスマホをちゃんと耳に当てる悟に「あっちで待ってるね」と一つの店を指差すと「ごめんね、すぐ行くから」と申し訳なさそうに呟く悟に笑顔で手を振りその場を離れた。
夜蛾学長との話なら、きっと簡単には終わらないだろう。少し時間がかかりそうだ。