第25章 初めての夜
「本当、可愛いったらないよね」
その瞳は先ほどまでとは違い、一瞬にして穏やかな瞳へと変わる。どこまでも優しく…そして愛おしいモノを見る瞳だ。
「何…いきなりそんな事言って」
「ふふっ、僕の奥さんはたまらなく可愛いなぁって思ってさ」
「お腹の音鳴らすところが…?」
「それもそうだけど、全部がだよ。君の全てがたまらなく可愛いんだ」
ニコリと瞳を細めると、寝転んだまま顔を真っ赤にしていた私の腕を引き身体を軽々と起こしてくれる。
「お腹すいたよね、ご飯食べに行こうか」
「…うん、行く」
「ヒナが好きそうなお店、予約しといたんだ」
悟は私を可愛いって言うけれど、きっとそれは恋は盲目と言うやつだ。だってあんな良い雰囲気の時にお腹を鳴らす女が可愛いわけがない。
それでもあんなにも優しく愛おし気に見下ろしてくれる彼の瞳を見れるのならば、例えどんなに恥ずかしかろうと、私のお腹の虫が空気読めなさすぎだろうと、そんなことどうでも良く思えた。
私は彼に愛されているんだ。こんな小さな事ですら、私に愛をくれる悟が愛しくてたまらない。