第25章 初めての夜
「ちょっ…悟!ここ外だよっ」
「大丈夫だよ、誰も見てない。だってほら、周りは海しかないんだから」
「…それはそうだけど」
悟の唇が首筋へと落ちていく。そしてそのままそれは胸元へと落ちると、私の着た白シャツの隙間を器用に舐め取りそして紅い華を咲かせる。
「……っん」
そのくすぐったさに身を捩らせながらも、彼の唇の心地よさに酔いしれるようにして悟の首へと腕を伸ばした時だった。
ぐうぅぅ〜〜
雲一つない空と、人っ子一人いない海が広がるこの空間に、何とも間抜けな音が響き渡る。
目の前にはサングラス越しでも分かるほど目をパチパチとさせ、そしてキョトンとしている悟の姿。
待って無理…
「恥ずかしすぎるんだけど……」
間抜けな音を出したのは、なんと私のお腹の音だ。腹の虫が鳴ったのだ。
今にも消え入りそうな声でそう呟けば、キョトンとしていた悟は身体を起こして一瞬にしてゲラゲラと笑い始めた。
「酷い!笑いすぎだから!!」
「あっはっはっはっ!!」
顔を真っ赤にして怒り出す私に、やっぱり悟は大爆笑をお見舞いしてきて、なんなら目に涙まで溜めている。
「だって…ブフッ…こんな良い雰囲気だったのに!ブッ…普通お腹鳴らす?…クックック」
「空気読めてないだなんて、そんなの私が一番分かってるよ!!」
本当悟ってば小さい頃からこういうデリカシーのない時あるよ!などと言えば、笑い疲れたのかヒィヒィと言って一通り笑ったあと、声を落ち着かせるようにして涙を拭った。