第25章 初めての夜
「出発予定のお時間を過ぎておりますので、お声かけ致しました」
その言葉に私と悟の動きがピタリと止まる。出発予定の時間が過ぎてる…
「え…今何時?」
私の呟きに悟が珍しく慌ててスマホを探し、布団の横に無造作に転がっていたスマホを手に取って目を見開いた。
「ヤバい、飛行機まであと2時間」
「嘘でしょ!?」
私も慌てて起き上がれば、あらかじめ用意していた服へと急いで腕を通して行く。
「どうせ起こすならもっと早く起こせよ!」
そんな風に襖の向こうへと悟は声を荒げているが、先ほどの彼の態度を見る限り予定時刻よりも前に声をかけられる訳がないだろうと思った。きっと早く起こしたら起こしたで「僕達の時間を邪魔するなよ」とか物凄く冷めた顔付きで言いそうだしね。
文句を言われている襖の向こう側の方に申し訳なく思いながらも、急いでいる手を止めることなく服を着替え慌てて洗面所へ向かい最低限の準備だけをすると、2人で急いで五条家の車へと乗り込んだ。