第5章 今夜から
画面に映し出されているのは主人公と幼なじみのヒロインがひょんなことから婚約をし心惹かれていくストーリーだ。
いや、なんかコレって…私達と少し設定似ていないか…?そんな事を思いながら少しだけ気まずい気持ちになる。
何故なら目の前ではその2人が絡み合うシーンが写しだされているからだ。
それは例えるならば親と月9ドラマのキスシーンを見ている中学生のような気分で、こんな話の流れだと知っていたらこの映画を選びはしなかったと後悔しても遅い。
抱きしめていたクッションに顔を埋めるようにして、何とか気まずい空気を出さないように画面を見つめる。いやいやいや、コレはどう考えても選択ミスだ。ミスチョイスだ。
きっと以前の私なら何の気にもせずこの映画を見て、ラブシーンなんかは良いなーラブラブなだーなんて呑気な事を考えていただろう。
だけど今は違う。いくらなんてもそこまで馬鹿じゃない。どう考えてもまるで私と悟を表しているみたいなストーリー設定に、わざわざこれを知っていて見ることを選んだと思われたらどうしようなんて変な汗まで出てくる始末だ。
うぅ…気まずいよ…私の馬鹿!何でこの映画選んだの!?いや、待って。もしかしたら何この映画つまんないなーって感じで悟は真剣に観ていないかもしれない。そんな気持ちを胸にチラリと隣の悟を見ればその表情は意外にも真剣に真っ直ぐと画面を捉えていた。