第5章 今夜から
悟の髪を乾かし終わり「ありがとう」という悟に「いーえ、またやってあげるね」と声をかければ、彼は嬉しそうに目尻を垂らした。
再びテレビのリモコンを握った悟につられて画面を見れば、以前見たいと思っていたが繁忙期と重なり見に行けなかった映画が目に入る。
「あ、これ観たかったやつ」
「ん?どれ?」
「その左上のやつ」
「これ?」
「そう!それ前から観たいと思ってたんだぁ」
私が指を刺したのは、王道のラブストーリーで全米が泣いたとかなり大きく宣伝をしていたものだ。
「じゃあコレにしよっか」
「やったぁ」
再生ボタンを押した悟は冷蔵庫へ向かうとミネラルウォーターとりんごジュース、そしてスナック菓子を持って来ると私の隣へと座る。
りんごジュースを手渡されそれを見れば、いつも私が飲んでいるお気に入りのジュースだ。悟の家に来る事はそう多くないし、頻繁に来ているわけでもない。それなのに、突然来たとしてもいつもこの私が気に入っているりんごジュースが常備されていて、やはりそこからも悟の優しさを感じた。