第5章 今夜から
「悟の髪ってふわふわで気持ちいいよね」
「そお?初めて言われたよ」
ソファーに背を預けながら私の足元に座っている悟は、その碧色の瞳を細め気持ち良さそうに穏やかな声を出す。
「そもそも最強術師の髪を触る人なんていないか」
「そうだよ、そんなのヒナだけだよ」
「ふふっ、私凄いね」
「凄いよ、僕の背後取れるのお前だけだから」
「確かに〜いきなり後ろから近付いても無下限で弾かれた事ないや。私のレベルが弱すぎて悟の無限が機能しないのかな?でも体術訓練じゃ背後なんて一度も取れた事ないけどね」
「そこは譲れないよ、僕だって男だし。ヒナが弱くて無限が効かないんじゃないよ、僕の身体が勝手にそうなっちゃってるの」
「そうなんだ?何でだろうね?」
「何でだと思う?不思議だよね」
ちっとも不思議に思ってなさそうな悟が、こちらを振り返るとサングラスの隙間から覗く碧の瞳を優しく緩めた。
「まぁとにかく、最強の僕の背ろを取れるのはヒナしかいないよ。今までも、これからもね」