第24章 結び
「ヒナは」
「本館桜の間にて準備中でございます」
「そう」
ポケットから慣れた手つきでサングラスを取り出せば、付けていた目隠しを外し無造作にポケットへと突っ込む。
結婚式の為に飾り付けられた本家の景色を眺めながら、一つの部屋の前で足を止めた。
襖に手を掛けそれを開けば、中からは花の香りがふわりと届き目の前の光景に思わず足を止める。
「悟様、女性のお部屋へ入る際にはお声かけ下さい」
昔からの顔馴染みの使用人がこちらを軽く睨み付けるようにして声を出すのも無理はない。自分の後ろ側に誰もいない事を確認し、ホッと息を吐き出すとそっと襖を閉めた。
「悟、お疲れ様!こんな日まで大変だったよね、ありがとう」
「うん、間に合って良かったよ。それより何してるの?」
タオルで大半は隠れているものの上半身裸でうつ伏せになり、何やら使用人達に面倒を見てもらっているヒナは気持ち良さそうに瞳を細める。
「んー?式の為にエステだってさぁ、気持ち良くて眠くなっちゃう」
トロンとした瞳にトロンとした声。
それに思わず自身の心臓がドクドクと熱を出す。