第24章 結び
五条家の門をくぐり、そこへと足を踏み入れる。何度も通った事があるはずのそこは、今日はまるで違う景色のように感じるから不思議だ。
特に好きでも嫌いでもないこの場所は、僕からしたらただここで生まれ育ち、そして今は当主として自身が治めているそんなどうってことない場所。
それ以上でもそれ以下でもない。
だけどあえて言うならば、僕と#NAME#が初めて出会った場所。僕が君を見つけた場所。
それだけが僕にとって、この五条家という場所でのトクベツで、そして大切な思い出だ。
使用人たちが慌ただしく走り回っている。結婚式の準備をしているのはもちろんだが、真っ黒な任務服を着て目隠しをした僕を見て「え?主役が何故そんな格好をしてここに?」とでも言いたげな驚きの表情を見せたあと「悟様、本日はおめでとうございます」と口々にして頭を下げていく。
僕はそれに返事をする事なく足を進めれば、ポケットからスマホを取り出し「着いたよ」とだけヒナへと連絡をした。