第5章 今夜から
「悟ーお風呂上がったよぉ」
リビングへと戻れば、ソファーに座っている悟はタブレットで何やら仕事をしているようだ。
「あれ?随分早かったね、もう少しゆっくり入ってきて良かったのに」
そんな彼はタブレットから私へ視線を移しこちらを見つめると不自然なほどピタリと動きを止めた。
「どうしたの?」
あきらかに様子のおかしい悟へ近づき隣へ座れば、彼はハッとしたように再び動き出すと「いや…僕の服デカかったなと思って」と再びタブレットへと視線を戻す。
悟の言葉に自分自身の着ている服を見つめる。うん…確かに大きい。上に来ている白いTシャツの袖は肘下まできているし、グレーのスウェットは4回も裾を折ったほど長い。
日本人女性の平均身長よりもやや小さい私が、190センチを超える悟の服を着るなんてそれはそれは体格差の違いに笑ってしまうほどだ。しかも悟の脚の長さは尋常ではなく、特にスウェットは大きすぎる。
「こういうベタなのが結構クるんだな」
「ん?」
「いや、こっちの話。じゃあ僕もお風呂入ってこようかな」
「うん、行ってらっしゃい」
「あ、そうだこれ。憂太からの海外任務の報告、見る?」
「見る見る、乙骨君元気そう?」
「元気みたいだよ、今度少し余裕が出来たら一度様子を見に行くつもり」
「そっかぁ、安心した」
悟は私へとタブレットを手渡すと「終わったらそこに置いといて」とサイドテーブルを指差し浴室へと向かった。