第22章 愛しい瞳
身体はまだ起こせない。それでも悟に触れたくて…少しだけ痺れる手を伸ばし冷えた指先を彼の頬に伸ばせば、悟はそんな私の行動に気が付いてくれたのか、その手を取りそっと自分の頬へと触れさせる。
「やっと…やっと悟に触れられた」
私の溢れるような言葉に、悟は一瞬目を見開き唇を噛み締める。だけどそれでも直ぐにその表情を消したのは、私が心から嬉しそうに笑顔を見せたからだと思う。
寂しかった、辛かった、悲しかった。
この1ヶ月のことを思えば、それはそれは表すことができないほどの感情が私を覆い尽くすけれど…それでも今、目の前に私の大好きな笑顔があるならばそれだけで十分だ。
他に何も望まない。
悟が私を好きで、そして私が悟を好きだという…たったそれだけのことで十分だから。
「ヒナ…僕を諦めないでくれてありがとう…こんな僕をまだ好きでいてくれてありがとう」
その声は微かに震え、そして後悔を滲ませたように囁かれた。