第21章 忘れモノ
彼女が傷つくくらいならば、この世界などぶち壊してしまいたいなどと平気で思える。
呪術師からは呪いは生まれない。それなのにこんなにも荒んだ気持ちになるのは何故だろう。
黒くて暗くてドロドロで、そんな感情に心が支配されていく。
彼女に害を与えるものは全て消し去ってしまいたい。
ずっとそうだった。ヒナに出会ったあの瞬間から僕にとって彼女は特別で、そして何よりも尊い存在だ。
彼女の笑顔を守るためならば何だってして来た。それが例え綺麗な事ばかりじゃ無かったとしても。
それでもそれが僕の中で何よりも優先すべきことで、そして恐ろしいほどの執着と感情が僕の中には存在する。
それを彼女は知らない。きっと永遠にこの僕の奥深い所にある感情をヒナが知ることはないだろう。それで良い、それで良いんだ。
知られたくない。こんな気持ち。
ヒナの前ではいつだって優しく穏やかな僕でいたいから。