第21章 忘れモノ
「……殺す」
沸々と怒りが沸き起こる。
熱が込み上げて頭が怒りで沸騰しそうだ。
腕が震える。
喉が乾く。
あぁ、もっと早くに処理しておけば良かった。
実際に命を奪ってしまったら、ヒナが責任を感じてしまうかもしれないと思いぬるい対応を取ったのが間違いだった。
「おい五条、どこにいくつもりだ」
背を向けた僕へと、ヒナから目を離さぬまま声を上げる硝子。その声は何処か焦ったようにも聞こえる。
「止めるなよ、クソほど苛立ってんだ」
部屋を出ようとしたところで傑がドアを開けて入って来た。僕を追いかけて来たのだろう。
「夏油その馬鹿をどうにかしろ!」
硝子の言葉と、部屋の中を見て瞬時に何かを理解したのか、傑は僕の腕を掴み引き留めるようにして声を出す。
「殺すなよ、そんなことをしたら立場が悪くなるのは悟の方だぞ」
「立場なんざどうでも良いんだよ、離せ」
「なら私も一緒に行くよ、君一人で行かせたらそれこそどうなるか分からない」
「勝手にしろ」