第21章 忘れモノ
「悟の話を聞いた時はどうなると思ったが、戻って良かったよ。もう少ししても戻る気配が無かったら君の目を覚まさせるために一度ボコボコにしなくてはと思っていたんだ」
「力技で思い出させようとしてたのかよ」
「記憶を無くしてからの悟のヒナへの態度には私も腹を立てていたからね。記憶も戻って君をボコボコにも出来て一石二鳥と思ったんだよ」
「返す言葉も無いのが腹立つよ」
そんな話をしていると、ポケットに入れていたスマホが鳴ったことに気が付く。
追加任務だったらどうしてやろうか。そんなことを思いながらスマホを取り出し、一瞬にして背筋に嫌な汗が流れた。
画面には硝子の文字。
嫌な予感がする。いや、でもまだそうと決まったわけではない。生徒の誰かが怪我をして治療をしたって連絡かもしれないし、他の要件かもしれない。
通話ボタンを押そうとしている指先が震える。
そんな僕に気が付いた傑が「悟?」と不思議そうに僕を見つめ、スマホを耳に当てた僕の尋常ではない雰囲気に一気に眉間へとシワを寄せた。