第21章 忘れモノ
「状況は少し落ち着いたが、まだ目を覚さないな」
3日が経ってもヒナは目を覚さなかった。
ヒナのそばを離れたくなくて、三日三晩何とか任務の予定を入れないよう伊地知に頼んで調整してもらったが、もうそれも限界だ。
そろそろ任務に出ないといけない。今日までの任務は傑が全部引き受けてくれていたらしい。
「今日は任務に行ってくるよ」
「あぁ、そうしろ。ヒナは私が見てる。何かあったらすぐに連絡するから」
「うん、頼むよ。なるべく早く戻ってくるから」
そう言った僕を、硝子はジッと見つめると何か言いたげにゆっくりと口を開く。
「早く戻って来なくていい、お前は一度帰って仮眠してこい。この3日間ほとんど寝てないだろう」
寝ていない。寝れるはずがない。
彼女の呼吸が止まってしまわないかと気が気じゃないし、もし目を覚ました時すぐにでも抱きしめてあげたかったからだ。
この3日間隣でずっとヒナの手を握りしめていた。