第21章 忘れモノ
僕に思い出してもらおうと頑張っていた彼女の姿が、いくつも脳裏に浮かぶ。
切なさを押し殺し、今にも泣きたい気持ちを押し殺し、きっと毎日僕を想ってそばにいてくれた。
後悔なんて言葉じゃ収まらない。自分への苛立ちが止められない。
少しずつ温かく熱を含んだきた彼女の手を握りしめながら、それを自分の唇へと触れさせた。
「…ヒナ」
きっと「ごめん」なんて言葉は正しく無い。
ヒナはそんなこと求めていないだろう。
心の奥底は暗く重たくて、彼女の青白くなっている表情を見て「お願いだから、頼むから」とそんな情けない気持ちで祈る事しか出来ないのだ。
他人が傷付くのを見てもちろん嫌な気持ちになる。生徒が傷つくのだって当然嫌だし守りたいと思う。
だけど、彼女へ向ける感情はそんなものじゃないんだ。
本当は傷一つ出来て欲しく無い
危険な事などしてほしくない
そんなもの、全て僕が引き受けるから
どうか安全なところにいてくれと。どうか僕の手からすり抜けないでくれと。
君への感情を忘れていたクズで最低な僕なのに、僕はただ君が無事ならばそれで良いだなんてそんな自分勝手な事を思ってる。