第21章 忘れモノ
いくつもの管が繋がれた彼女を見下ろす。
硝子はヒナの小さな傷を治したあと、僕に気を使ったのかノートパソコンを持って仮眠室へと入って行った。
僕の頭に浮かぶのは、ここ一ヶ月の彼女の姿だ。
もちろん自分がヒナを好きだという感情を忘れていた間の記憶はある。
一部記憶が無いと知ったとき、特に不便はないと言った事も。
ヒナと別々のベッドで寝ていたことも。
彼女に部屋は決まったかと聞いたことも。
時折見せるヒナの辛く切なそうな表情も…
全部全部覚えている。最低な事をしたなんてもんじゃない、自分を嬲り殺したい気分だ。
それなのに、ヒナはいつだって僕を真っ直ぐに見つめてくれていた。
家で一緒にいる時間を多分一生懸命作ってくれていた。
高専にいる時も時間があれば僕へ声をかけてくれたり、差し入れをしてくれていた。
二人で良く食べていたケーキやお菓子だ。