第21章 忘れモノ
「分からない、ヒナがここまでやられるのはおかしい。おそらく悠二を人質に無抵抗でやられたのかもしれない」
「呪詛師は片付けたのか」
「もちろん、ギリギリ殺さないラインで留めたよ」
「そうか、意外だな。てっきり全員殺してるかと思った」
「殺したいところを我慢したんだよ。そのかわり早く殺してくれって泣いて喚くほどの苦痛を与えるつもりだ。後悔させてやるよ、僕の大切な人を傷付けた罪は重い」
「…思い出したんだな」
「あぁ、皮肉なことにこんな時に思い出した」
「そうか、それは良かったな」
何も良くなどない。そんなこと僕も硝子も分かっている。これはただの気休めで、目の前に横たわる顔を白くさせたヒナが現実だ。
「とりあえずやることはやった、あとはヒナの回復を待つ他ない」
「あぁ」
「今夜はここに泊まりたければ泊まれ、私は隣の仮眠室にいる。明日の任務はちゃんと行けよ、お前がいたところで出来ることなんて無いんだから」