第21章 忘れモノ
自身の手と服にべったりとまとわりつく血に腕が震える。
小さく短い呼吸が止まらないかと怖い。
怖いだなんて、今までの人生において思った事があっただろうか。
高専時代、伏黒甚爾に殺されかけた時ですらそんな事は思わなかったはずなのに。
腕が震えるのも、恐怖で目の前が見えなくなりそうなことも。
全て全て初めてで…
高専へとトび、医務室のドアを勢い良く開けた僕はさぞかし酷い顔をしていたことだろう。生徒達の前だけでも平静を装えていたのが奇跡だ。
「硝子!!」
僕の尋常ではない声に、硝子はデスクに座っていた身体を勢い良く起こし振り向く。
「ヒナが呪詛師にやられた!腹部の出血が酷いッ」
硝子は慌てたように駆け寄ってくると、ベッドへと寝かした彼女を見て険しい表情を見せる。