第21章 忘れモノ
その瞬間、頭の中に次々と蘇る記憶と感情。
それはとても静かに、そしてまるで僕を嘲笑うかのように流れ込んでくる。
あぁ、僕は馬鹿だ。
何故こんなことを忘れられた。
何故こんなにも大事な事を忘れていた。
まるで己の領域を受けたような脳内の記憶と感覚に、自分の愚かさと後悔が押し寄せる。
「ックソ」
こんな状況になり、やっと彼女への感情と記憶を思い出した自分が腹立たしくてイラつく。
だけど今は己の愚かさに浸っている場合ではない。一刻を争う。僕はヒナを抱えると2本の指を悠二の額へと触れさせた。
その瞬間、悠二はパッチリと瞳を開きそのままその瞳を大きく丸める。
「五条先生!?」
「悠二、説明は後だよ。とにかく僕に捕まって」
「へ?え?待って、どうして。え…椿…せんせ…」
「悠二、急いで」