第21章 忘れモノ
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暗い感情が沸々と沸き起こる。
何とも言え難い、酷く汚い感情だ。
椅子に座り特殊な呪具で拘束された悠二、怪我は一切ないが気絶させられたのだろう。完全に気を失っている。
そして何より…
悠二の少し背後に横たわるその人物を見た瞬間、自分の理性など無いに等しいモノだったのだと知る。
怒りも、苛立ちも、殺意さえも一瞬で消えてなくなる。
あぁ、彼女をこんな目に合わせたやつはこの世から跡形もなく消し去ろう。そう単純に冷静に思ったのだ。
両手両足は呪力を通さない特殊な鎖で繋がれ、頭部からは出血。服はボロ雑巾のように破れている。
悠二の拘束を破り怪我がない事を確認すると、急いでヒナへと駆け寄る。
彼女を抱えた瞬間、言葉を失った。
ぬるりとした感覚が手の中に広がる。それが何なのか確認しなくても分かった、そしての深刻さに彼女を抱き止めている手が酷く震える。