第21章 忘れモノ
それは時に残酷な事だと言う事を彼女は知らない。
現に、きっと今僕のはらわたが煮えくり帰りそうなほどに怒りを表していることも、悠二とヒナを連れ去った連中を殺してしまおうと思っていることも、恐らく彼女は知らないだろう。
「恵と野薔はここにいて、僕は二人を追う」
「俺も行きます!!」
「私も行くわ!!」
「いらないよ」
「何でですかっ」
「わからない?足手まといだって言ってるんだ」
恵と野薔薇がヒュッと息を呑んだのが分かった。それほどまでに僕の声には怒りが含んでいたからだ。
「ヒナが戻って来ないくらいだ、そう簡単な相手じゃない。恵と野薔薇は待機。分かったね?」
二人が唇を噛み締めたのが分かる。悠二とヒナを心配なのは分かる。だけど二人を連れて行っても危険にさらすだけだ。
「…分かりました」
「納得いかないけど、そう言われたら仕方ないわね」