第21章 忘れモノ
「ヒナと最後に連絡を取った時、何か言ってた?」
「五条先生を呼ぶようにと、ただそれだけです」
悠二が連れ去られてから2時間。ヒナと連絡が取れなくなって1時間半か。かなり時間が経っているな。
僕を呼んだと言うことは、自分が理性を保てなくなると判断したのか。だけどそれならば、今頃彼女はとっくに悠二を連れて戻って来ているはず。
恐らく、何があったのだろう。そうでなければ彼女の実力で呪詛師ごときに足止めをされる訳がない。
宿儺を何かに利用しようとしている奴らの仕業か。それとも腐ったみかんどもの仕業か。
上の奴らはそれこそ自分の地位や名誉のためならば何にでもやるだろう。それが例え仲間殺しだったとしても。呪詛師を利用する事なんか朝飯前なのだろう。
反吐が出る。クソみたいな世界の上にはクソみたいな連中しか居ないのか。
悠二は、恐らく無事だろう。そう簡単に宿儺の器である悠二を攻撃してくる馬鹿はいない。呪霊は例外だろうが。
問題はヒナだ。アイツはきっと、可愛い生徒のためならば自分の命をも平気で軽んじる。そんな性格だ。