第21章 忘れモノ
「今、どんな状況?」
早足で歩きながら、背後からついて来ている恵と野薔薇へと声をかける。
連絡があったのは30分前、まだ任務を終えていなかった僕にかかって来た電話は、揺らぐはずのない僕の心を揺らがせた。
「呪詛師数名に虎杖が連れ去られたのが2時間前、それを追いかけた椿先生と連絡が取れなくなってから1時間半です」
「チッ」
酷く喉が乾く。苛立ちのせいだろうか。
冷静でいるはずなのに、心はどこか焦慮していて…自分の気持ちがチグハグだ。
任務中心を乱した事などない。仲間が死のうが、身内が死のうが、可愛い生徒が死のうが。それは変わらず僕の心はいつだって酷く冷静だった。
意図しているわけじゃない。もともと冷たい人間なのだと。確かに今まではそうだったはずなのに…
今はやけに心臓がうるさく、そしてあることが頭をよぎってはさらに心がザワつく。