第5章 今夜から
「ふぇ?一緒に住む?私と悟が?」
思わずそんな間抜けな声が口からこぼれ落ちて、それを聞いた悟は楽しそうにクスクスと笑いながら「そうだよ、僕とヒナが一緒に住むの」と当たり前みたいに言ってのけた。
ちょっと待って、お見合いの時の話同様、全然ついて行けてない。
「…悟?私全然話の流れ掴めてないみたい…」
手を引かれるがまま歩いてはいるが、全くと言って良いほど理解出来ていない私は困惑したように悟を見つめた。
だって今日からいきなり一緒に住みますって…そんないきなり!?と思うのは当然なわけで、しかもどうして突然?とも思うわけで…
そんな私を目隠し越しに見つめた悟は、エレベーターに乗り込むと最上階のボタンを押しこちらへと振り返った。
「僕さ、思うんだよね。やっぱり結婚するなら仲良し夫婦が良いなって。あ、ちなみにただの仲良しじゃないよ?ラブラブって方の仲良し」
「ヒナもそう思うでしょ?」と付け加えられた言葉は、思ってもいなかった発言で、思わずポカンとしながら答える。
「え、あ…うん。そうね、仲良し…大事だよね」
いや、だってまさか悟からそんな言葉を聞くとは…だって悟はどちらかというと女性とベタベタラブラブしたく無いタイプだと思っていたからだ。
よくナンパされてるのは高専時代から見てきたものの、それに応えている事なんて一度も見たことがなかったし、むしろいつも心底嫌そうに掴まれた腕を振り払っていたほどだ。さすがに一般人相手に無下限を使えるはずもなく、致し方なく解いてたものの「触んなブス」などと学生時代は平気で言っていたのを聞いたことがある。