第5章 今夜から
悟が呼んでくれていたタクシーに乗り込むと「ごめん、ちょっと仕事のメール確認する」とスマホを取り出し面倒臭そうにしながらも画面を真剣に見つめる悟。
私も明日の任務の確認をしようと持っていた鞄からタブレットを取り出すと、それをスクロールしながら読み始めた。
大事な予定があると言っていた悟だけれど、しばらくしてタクシーが到着したのはいつも通り私達が住むマンション前の道路だ。
悟はこのままタクシーに乗って出かけるのだろうか?そう思い先に降りようとした私だけれど、後から降りてきた悟を見るにどうやら一度家に帰るらしい。
「じゃあお疲れ様!おやすみ」
そう言って手を振りながら自分のマンションへ入ろうとした時だった。
「ヒナは今日からこっちだよ」
「へ?こっち?」
ギュッと悟によって握られた右手。そんな彼は私のマンションの隣にあるやたら高いその建物を指差した。
「どういうこと?」
「今日から僕達一緒に住むからね」
にっこりと笑みを見せるその悟の言葉に、私は何を言われているのか分からずフリーズしていると悟はそんな私を気にする事もなく掴んでいた手を引いて歩き始める。