第20章 執着
「さ、とる…」
好きだと言ってしまいたかった。あなたが好きで大好きで、私達は婚約者なのだと。
「呪いにかかった時、僕は何の問題も不便も無いって言ったけど、だけど本当は違うよね。すごく大切で重大な事を忘れてるんだよね。だってそうじゃなきゃ…君がこんなにも辛そうな顔をするわけがない」
「……っ…」
鼻の奥がツンとする。喉の奥は焼けるみたいに痛くて…きっと瞬きをしたら涙が零れ落ちる。
「分かるんだ、何となく。日が経てば経つほど、ヒナと一緒にいればいるほど、早く思い出さないとって。無くなった記憶なんてどうでも良かったはずなのに…君が時折見せる悲しそうな顔を見るたびにそう思うんだ」
思い出してほしい。今までの二人の思い出を、私だけのものになんてしたくない。二人の温かな思い出へと戻ってほしい。
「あのさ、抱きしめて眠っても良い?」
「え…」
「そうしたら、何かが少しでも変わる気がするんだ」