第20章 執着
言わなかった理由はハッキリとしている。あなたと寝るのが出来なくなったので、寂しくて一人のベッドに眠る気なんて起きなかったと。でもそんなこと口が裂けても言えるわけがない。
それどころか、こんなのはただの私の我儘でエゴだ。ベッドだって布団だってさっさと買えばよかった、子供じゃあるまいし一人で寝るのが嫌だなんて馬鹿みたいな話だ。
だけど、それが出来なかった。
そんな簡単な事すら私達の関係を否定しているようで、私達の間に愛が消え去ろうとしていると確かな物に変えてしまいそうで。
ただ段ボールだらけの部屋でクッションと毛布に埋もれることで、それが少しでも保てるならばそれで良いとそう思ったんだ。
「…あれで不便は無いかなと思って」
だからそんなしょうもない私の嘘に、頭がキレる悟は絶対に気がついていただろう。これが嘘で私の本心では無いと言うことが。
「君一応良いとこの娘なんだからさ、質の良い布団が恋しいなとかなりなよ」
だけど悟はそんな私の見え透いた嘘に「はぁ」と吐き出した息とともに、そんな冗談じみた言葉を呟いた。