第20章 執着
「そうだね」
「何で!?」
「だから言ったじゃない。あんな所で寝てるって知ったらさすがにほっとけないって」
「大丈夫だよ!明日布団買いに行くんだし、あと1日くらい平気!それに今までだってあそこで寝てた…」
そこまで言ったところで、悟がタクシーの窓辺へと手をかけ頬杖をついたままこちらを見つめた。
その表情は何処か少し怒っているようでピリピリとしたものが伝わってくる。
「まぁ今まで気が付いてなかった僕も悪いんだけどさ、ヒナはちょっと僕のことなめすぎ」
「…へ?」
「いくら性格の悪い僕だって気にするよ、女の子があんな所で寝起きしてたら。まぁ気が付いてなかった自分が一番腹立たしいけど。何で今まで言わなかったの?」
低く発せられた声はどこか素っ気なくて、多分それは私に対してじゃない。悟自身へ言い聞かせているのだと思った。私があの荷物だらけの中毛布一枚で寝ていた現実に苛立っているようだ。