第20章 執着
例えそこに恋心や愛がなかったとしたも。悟に求められた現実が嬉しかった。
彼がそう思ってくれていた事がなによりもよりも嬉しかった。
さっきまでの胸の痛みが嘘みたいに引いて行く。自分のそんな単純さに嫌気がさしながらも、彼の言葉に喜ばずにはいられなかった。
「…あの家にいても、良いの…?」
「うん、もちろんだよ。むしろいて欲しい。だからさ、ね、一緒に帰ろう」
ずっと悟が私を愛おしげに見つめてくれないのが辛かった。だけど今は、これで良いのかもしれない。彼が私を好きじゃなくても、私を必要としてくれるならば。その事実だけで心が軽くなるのだから。
「うん、私も…あの家に帰りたい」
私と悟の大切な家へ。
私と彼の思い出がたくさん詰まったあの場所へ。それが例え今は私だけの思い出だとしても、またここからつくれば良い。また悟との素敵な思い出を作って行けばいいのだ。
そして、少しずつ歩み寄れたら…それは何物にも変え難い私の幸せだから。