第20章 執着
「帰って君が家にいなければ寂しいと思ったし、君が出張でいない日は朝から気分が重たかった」
「……っ…」
「昼間に家が見つかったか聞いたのは出て行って欲しくなかったから。その後ヒナの様子が変で追いかけた時、本当はずっとあの家にいてよって言いに行ったんだ。むしろ一緒にいて欲しいって」
「そう…だったの…?」
「まぁ傑と抱き合ってるの見てそれどころの話じゃ無くなったけどね」
悟は自分へ呆れたように苦笑いして見せると、ゆっくりと目隠しを外す。
悟の目隠しを外した姿を久しぶりに見る。記憶を無くしてからはほとんどこの姿を見ていなかったから。
彼は私を見下ろし眉を垂れ下げると、薄く形の良い唇をゆっくりと開いた。
「ねぇ、お願い。帰ってきてよ、僕の我儘だって分かってるけど、ヒナと一緒にあの家で暮らしたいんだ」
涙が溢れそうだった。
悟がこの一ヶ月そんな風に思ってくれていたのだと知れたから。自分の努力は無駄じゃなかったのだと、彼に振り向いてもらえるよう頑張って良かったと。素直にそう思った。