第20章 執着
「…言われてないけど」
悟はうつむき言葉を詰まらせる私に、苛立ったように乱暴に白髪の頭をかくと「チッ」と軽い舌打ちを落とした。
「僕、正直ヒナと一緒に住んでるって聞いた時何でと思ったよ。いくら仲が良くても自分が他人と住むなんてあり得ないと思ってたから」
そうだったんだ。そんなことを思っていたんだ。
「だけどまぁ気心知れた仲だし良いかって、どうせ家に帰るのは寝る時だけだしって思ってた。だけど一週間した頃くらいからかな、ヒナ突然僕の帰りを待ったり朝早起きして僕に合わせるようになったよね」
「…分かってたんだ」
「そんなことされたら本来の僕ならいくら幼馴染でもウザイと思うはずなのに、全くそんな事思わなかった。むしろ帰って君が迎えてくれるのが嬉しかったし、朝起きた時おはようって言ってくれるのが嬉しかった。時々作ってくれるご飯も、空いた時間に二人で映画を観ながらアイスを食べる時間も。いつのまにかヒナと一緒に暮らすのが心地良くて安心出来る時間になってた」