第19章 大切な記憶
本当はそんなの嫌だ。悟のそばにいたいと…そう思うはずなのに。またさっきみたいに傷付き胸がぐちゃぐちゃになるのは怖い。悟が私をいつもの甘い笑顔で見下ろしてくれないのが辛い。
もう1ヶ月も悟は私を好きだという感情を忘れているんだ。もしかしたらこのままずっと忘れたままかもしれない。一生私を好きになることはないかもしれない。
そう思うと…もう信じられないほどに苦しくて、呼吸が出来なくなるほどに胸が痛んだ。
二人の間に渦巻く呪力は重く身体を縛りつけるようで、ワザと二人が呪力を放出して威嚇しあっているのがわかる。まるで獣の争いのようだ。
「おい、お前ら。良い加減にしろ」
その瞬間、助かった。とそう思った。
低く恐ろしいほどに震えた声は、二人を止めるには容易く最も有効的な手段で。悟と傑はバッと一瞬にして呪力を消し去ると声のした方へと振り返る。
その顔は見なくても「ヤバイ」という表情をしているのは確実だった。