第19章 大切な記憶
少しの間を開けた後「君の知っている通り、私達はそんな関係ではないよ」と傑はハッキリとした声色で言い放つ。
「なら何で抱き合ってんだよ」
「別に君には関係ないだろう、私とヒナが何をしようが。それにこんなの学生の時から良くしてたじゃないか」
傑の冷たい声と、そして悟の怒ったような声がぶつかり合う。何故悟が怒っているのか…それは良く分からないけれど、機嫌がすこぶる悪く最悪な状況だということは分かる。
傑が言うように、私がこうして傑に背中を撫でるように慰めてもらっているのは珍しい光景ではない。
それこそ学生時代なんかは、任務で上手くいかないたびグズグズと泣く私を良く慰めてくれていたのは傑だった。
私を好きでもない悟が、そんな良く見かけて居た光景を何故今更そんな風に言ってくるのかは分からないが…とにかく今私は悟の顔を見れるような状態では無い。
目は腫れておかしな事になっているし、何より先ほどの悟の言葉をまだ自身の中で整理できていないのだ。整理も何も無いのかもしれないけれど、まだジクジクと痛む胸が苦しいし、悟の顔を見る勇気もなかった。