第19章 大切な記憶
「何してんの」
だからだろうか、そんな低く冷たい声を聞いた瞬間。ヒュッと喉の奥が焼けるように一瞬にして熱くなった。
何故彼の声が突然聞こえてくるのだろうとか、さっき別の方向に歩いていったはずなのにどうしてここにいるのだろうとか、そんな事よりも彼の放つその呪力の重さに身体が震えた。
「オマエら、そういう関係だったっけ?」
ガタガタと震える手で傑の胸元の黒い服を握りしめる。未だに背後へと振り替えずにいる私を、傑は心配そうに見下ろした。
そして私の背後から聞こえてくる声に、傑は「はぁ」と小さな溜息を吐き出すと私を抱きしめていた腕をスルリと離す。
「そういう関係って何だい?悟」
「抱き合うような関係かってことだよ」