第19章 大切な記憶
あぁ、そうか。拒絶をされなかったからといって、私が一緒に住む事を快く思っていたわけでは無かったのか。
ははっ、自惚れていた。馬鹿みたいだ。
悟は私が家をちゃんと探していると思っていたのか。それなのに私は…悟が私を好きだという感情を失っていても、それでも私は彼にとっては少なからず特別な存在で、そして一緒に住む事を許可されたのだとばかり思っていた。
でもそんなこと、全然違ったんだ。自惚れてた。馬鹿みたいだ。恥ずかしい…
恥ずかしくて顔から火が出そうだった。いっそのこと、ここから走って逃げ出したくなった。
だけどそんな事をできるはずもなく、私はただはひたすら平静を装って「ごめんね、なかなか忙しくて探せてないんだ」なんて嘘をついた。
本当は家なんて探して無かったくせに。このまま一緒に住んでいて良いんだと勘違いしていた自分を恥じた。
「そっか、まぁ焦る必要はないよ。部屋は空いてるわけだし、僕達ほとんど家にいないしね」
「…うん、ありがとう。でもなるべく早く出ていけるようにするよ」
少しばかり言葉が震えたと思う。唇は緊張からかカサカサになって水分を失っていたし、喉から搾り出した声は恐ろしく小さく情けなかったと思う。
そんな私の言葉に悟は一瞬間を開けジッとこちらを見下ろしたあと「うん」とだけ返事をすると、私を見下ろしていた視界を外し再び視線を前へと戻した。