第19章 大切な記憶
こうして悟が私を好きじゃなくなってから気が付いたことが結構ある。
悟が任務の時は私が一年生の授業や任務の付き添いを。私が任務の時は悟が一年生の授業や付き添いを。それが主な日常での仕事のルーティーンだ。
だからだろうか、用がない限り本当に会わない。そもそもいる場所が違いすぎる。何か用があったとしても、連絡を取らないと会うことなんてほとんどなくて、伊地知君がよく悟を必死に探している理由がやっと分かった。
そして次に、家でも全く会わないのだ。元々お互い忙しい身だ。一緒に住む前は本当に家なんて寝るためだけの場所で、悟と婚約して一緒に住むようになってから家は二人でゆっくりする癒しの空間になっていたが、そんな二人の時間が無ければ本当にただの仮眠部屋だ。
悟がいつ帰ってきていつ出て行っているのかも分からない。多分それは悟も同じだろう。
だけれどそんなすれ違いの生活が嫌で、悟の記憶が無くなって10日ほどした頃には何とか自分から悟の時間に合わせるようどんなに疲れていても朝早く起きたり、悟の帰りを待ったりするようにした。
そうでもしないと、本当に二人での時間を持てないからだ。