第19章 大切な記憶
それは一週間経っても、二週間経っても変わる事は無かった。
相変わらず悟は私を好きだという感情を丸々忘れているし、私にあの甘い笑みを見せてくれることもない。
最初はそれがどうしようもなく辛くて悲しくて、だけどある日ふと思った。
悟はもうずっと何年も私に片思いをしてくれていた。私が好きを返さなくても私を好きでいてくれたんだ。
ならば、私だって悟が私を好きじゃなくても彼をただ真っ直ぐ好きでいよう。私を好きだと言う気持ちを忘れてしまったのだとしたら、また好きになってもらおう。そう思ったのだ。
それからは、周りにバレない程度に色々と頑張った。
悟に積極的に話しかけてみたり、最近二人で一緒に食べていたお気に入りの甘味を差し入れしたりなんかをしてみた。こんな簡単な事で記憶が戻るとは思えないけど、それでも少しでも何かの役に立てばと思ったのだ。
そして何より、私自身が悟と一緒にいたかったから。