第19章 大切な記憶
結局その後2本も映画を観た。
「そろそろ寝ないとね〜」と言う悟の言葉でそれぞれ部屋へと向かう。
「おやすみ、ヒナ」
「うん、おやすみ…」
悟が向かうのは、もちろんいつも私達が二人で使っている寝室だ。そして私が向かうのは、引っ越して以来ほとんど荷解きをしていなかったあの段ボールだらけの部屋。だって当然だ、こんな状況で一緒に眠れるわけがない。
いつも使っている二人の寝室からは、先ほど悟がお風呂に入っている間に枕を回収してきた。この段ボールだらけの部屋を見たらきっと悟は怪しむだろうから、ここの部屋を使わせてもらっているという話をした時、この部屋は絶対に開けないよう強く言っておいた。
「確かここに、前の家で使ってた毛布とかクッションが入ってたはず」
段ボールをいくつか開けてゴソゴソと中身を出す。そこには圧縮された毛布とクッションが数個。
悟は家に普段誰も招く事は無いらしく、お客さん用の布団などない。とりあえずしばらくはこの毛布で過ごそう。