第17章 二人の出張
「どうしたの?しんみりした顔して」
「んーん、帰りたくないなぁって…そう思っただけ」
大切な人が出来るほど、その人が好きで大好きでたまらなくなればなるほど、私達の世界は辛く、そして歪んで行くのだ。
私の顔を覗き込む悟を見て思う。
こんな幸せがずっと続きますように。ずっとそばにいられますように。ずっとずっと…永遠に、あなたが笑顔でいられますように。
「そっか」
きっと悟は今、私が何かを考えている事に気が付いている。だけど何も聞かないでいてくれるのは、もしかしたら彼の気持ちも同じだからなのかもしれない。
悟は繋いでいた手をグイッと引っ張ると、私の身体を優しく包み込むようにして抱き寄せた。
「ヒナ、僕は君に出会えて幸せだよ。そうじゃなければきっと、僕はただの顔の良い最強だった」
「…………それって笑うところ?」
「うん、笑うところ、ふふっ。だけど本当に、僕はヒナに出会えてなかったらこんなにも普通らしく生きていなかったと思う。それこそ恋人と沖縄デートするなんて絶対に無かっただろうね。ただ膨大な呪力を持った感情の無い兵器みたいな存在だったと思うよ」
「…どうしてそう思うの?」