第4章 特級呪物
バンっと勢い良く屋上の扉を開けると、目の前に見えたのは頭から血を流す恵君…と、上半身裸の少年?
私は全速力のスピードのまま恵君の前に立つと、その少年を真っ直ぐに見つめた。
おかしい、さっきまで恵君の近くにいたはずの恐ろしいほどに禍々しい呪力の塊が消えている。いや、違う。消えたんじゃない…この子…
「椿先生っ」
「大丈夫?恵君」
その声は私にしては、やけに冷静だったと思う。驚いたように私を見つめている恵君は頭から垂れている血を制服の袖でそっと拭い口を開こうとした時だった。
「今、どういう状況?」
「悟!何で!?」「五条先生!どうしてここにッ」と私達の声が重なる。
私と恵君が振り返った先には、紙袋を片手にポケットへと手を突っ込んだ悟が呑気に笑いながら立っていたのだ。
「来る気なかったんだけどさ、さすがに特級呪物が行方不明となると上が五月蝿くてね。観光がてらはせ参じたってわけ。それより何でヒナもいるの?」
「私は恵君から連絡もらって心配で来たんだよ」
「いやーヒナは本当に先生の鏡だね」
「来る気なかったけど観光がてら来た悟よりはそうかもしれないね」
「で、見つかった?」